[開催報告] ギャラリーMALL〈対話型鑑賞〉を人材育成に活かす


1月11日、経営学習研究所の2013年年明け第一弾となるラーニングイベント:ギャラリーMALL「〈対話型鑑賞〉を人材育成に活かす」を開催した。MoMAで学んだ対話型鑑賞の第一人者である福のり子さんと、阪急阪神ホールディングスの人材育成担当である岡崎大輔さんをお招きして、対話型鑑賞という手法の人材育成への適用可能性について、体験しながらディスカッションを行った。松が明けて早々にもかかわらず、50名以上の方にご参加いただいた。

対話型鑑賞とは、「意識を持ってみる」「直感を大切にしながら考える」「話す」「聞く」という、多くの人が毎日当たり前にしていることを最大限に活用しながら、アート作品をみながら感じたことや疑問点について対話しながら鑑賞していく手法である。1980年代にMoMAで開発され、近年は批判的思考力の育成など、美術鑑賞教育の領域を超えて再注目されてきている。

イベントでは、福のり子さんのナビゲイトによる対話型鑑賞体験からはじまった。作品は「カラカラ帝」。メトロポリタン美術館収蔵の、1800年前に造られた彫刻作品である。怒っているだとか、考えているとか、滑稽な顔だとか、さまざまな意見が出てきた。それぞれの意見について、福さんは「作品のどこをみて、そう思ったのか」を参加者に繰り返し問いかけた。すると、まゆをしかめているさまや、上のほうを見据える瞳、鼻筋の削れ、あるいは意外とぷるっとした唇など、作品の細かな要素が少しずつみえてきて、それがさらに鑑賞を豊かにする。

そして、休憩をはさんで2作品めは、福のり子さん、岡崎大輔さんそれぞれのナビゲイトで、もう少し突っ込んだ対話型鑑賞体験をしてもらった。福のり子さんの作品は「Candy Blue Night(奈良美智)」岡崎大輔さんの作品は「靴(ヴァン・ゴッホ)」。さきほどよりも距離が近く、お酒も入ったことで親密な雰囲気となり、それぞれの鑑賞体験を楽しんでもらえたのではないかと思う。

福のり子さんがミニプレゼンの中で挙げた、対話型鑑賞のポイントは5つである。

  1. 観察力/洞察力が身に付く
  2. 批判的思考力の向上
  3. 人が、そして自分がみえてくる
  4. 他者の言葉で変わっていく自分に気づく
  5. 建設的な相互作用

それに続いて岡崎さんは、「仕事の中では、どうにかして自分の意見を通そうと躍起になりがちだが、この手法を体験することで、他者の意見を聞いて、そこから考えることを意識できるようになる」とコメントしてくださった。

ダイアローグ、そしてその後の理事による新春座談会の中では、factとtruthの違いについての議論が盛り上がった。factとは、ひとつしかない、明らかな「事実」のことであり、truthとは、一人ひとりにそれぞれある解釈としての「真実」のことである。アート作品という、一般には感性で読み取るものと誤解されがちな対象を題材に、きわめてロジカルにfactとtruthを区別しながら対話を進めていくという手法は、研究や実務にも通じる一般性を持ちうるのだなと僕は感じた。ただしそこには、アートの文脈と研究や実務の文脈の橋渡しをする人がどうしても必要になる(「仕事中にアート鑑賞なんて…」と言われないために)。

当日の中原代表理事によるラップアッププレゼンテーションでは、対話型鑑賞は一人ひとりが違う価値観を持ち、他者と関わり合いながら生きていくという(当たり前だけれども)最も伝えにくいことを伝えるきっかけになりうるということ、そして、アートという一見不確実なものからこそイノベーションが生まれるが、そこへの投資は本気度が試される(マネジメントアート)ということをお話いただいた。

本企画のために京都・大阪よりいらしてくださった福のり子さん、岡崎大輔さん、そしてご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

当日のツイートまとめはこちら。
http://togetter.com/li/438064
MALL研究員の松浦さんと岡部理事が用意してくれた、56種類ひとつも同じ味がないチョコはこちら。
http://www.meiji.co.jp/sweets/choco-cafe/56choco/
「あの作品、タイトルはなに?」「いつ頃の作品なの?」と思われたみなさま、作品情報は、以下のPDFからどうぞ。
http://www.acop.jp/news/docs/130111mall.pdf

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